日本国は島ですから周りは海に囲まれています。この島に北はロシアや樺太から北方民族が渡り、西から朝鮮半島、中国北東民族が渡り、南からミクロネシア、ポリネシア民族がこの島に渡ってきました。北方民族はやがて列島を占めて蝦夷民族となって一時期の勢力を形成した筈。蝦夷民族はやがて朝鮮から渡ってきて勢力を形成する大和民族に破れます。これがこの島国の普通にいう成り立ちです。
 
 一方伝説に「浦島太郎」があります。異郷伝説ですが、万葉集にすでにあるのですから相当古い。漁師が助けた亀に連れられて竜宮城に、乙姫様に渡された玉手箱のタブーを破って白髪の老人となってしまうもの。島国から連れられていった竜宮城は島国日本の外にあります。海を見るとほとんどの日本人が地平線を見る筈。海を覆う空より地平線を見てしまう。地平線の先になにがあるのかが気がかりなのです。

 陸地続きの国境をもち、いくらでもその先をうかがい知ることのできるユーラシア大陸は冒険と征服の戦場でした。アレクサンダー大王がダリウスと争い、ジンギスハンが中央アジアを駆けめぐり、そこには先が見えなくて気がかりなどという不透明さは存在しません。

 要するに島国の外は海なのです。ですから海のなかの竜宮城が外なのです。そこには見える敵はいません。陸地ならいるはずの異属の民はいないのです。だから鯛や平目の舞い扇なのです。ですが外の甘さや島国より違うものをみてしまったものは口を閉ざさなくてはなりません。島国の平穏を維持するには異郷の情勢は不安を醸成するだけですから。

 こうして島国日本が成立し民の意識が積み重なっていきました。この間秀吉の朝鮮出兵、があったものの外との関係は閉ざされてついに維新がおこり、日清、日露の戦争という歴史上まれな異常事態となったのです。この時代は島国日本の稀な時代でした。が奇跡的に勝利し、その後第一次、第二次という悲劇が島国を襲うこととなります。いわば乙姫さまの玉手箱をあけてしまったというわけです。

 そして現在、知ってか知らずか、運命の神は島国日本に大亀中国との関係を迫っています。また海を遠くはなれた米国という乙姫様が浦島太郎にささやいています。私との関係はどうするの。

 島国だけで満ち足りた時代にはもう戻れません。過去に向かっては歩けません。未来という明日が否応なく待ってます。困難な太郎の時代が始まりました。