これまでのあらすじ
<今から50年も前、青春と500ドルを握り締めて横浜を片道切符でユーラシアに放浪の旅にでた。二年の欧州滞在を経てパリからカルカッタまでの3万キロをボロVWで踏破。「荒野を目ざせ」や「深夜特急」より数年も前の記録。



 幸い白黒だが写真が残っていた。前年92歳で亡くなった母親がパスポートと一緒に箪笥にしまって置いてくれた。母が保管してくれていなければこの紀行はとても書き残すことは出来なかったろう。写真を見ると当時のことが眼前に現れてくる。母の想いは深い。

 
真っ暗闇の砂漠を走るヘッドライトに突如照らされた白いターバンの一団。 

 蜃気楼の砂漠に真っ赤な太陽が沈んでゆく。辺りがつるべ落としのように暮れてゆく。砂漠にある光源は昼間の太陽と夜の月と星だけである。

 太陽が沈む。闇がビロードの緞帳のように降りてくる。真っ暗闇である。

 あふがん1あふがん2あふがん3

 昨日ヘラートのチャイハネでチャイを飲んだとき親父が我々に、もしカンダハールに向かうなら昼間走って夜陰は安全な所で休むように言っていたことが気がかりだった。最近盗賊が出没するからだと言う。もう少しで次の村ディアレムに差し掛かる筈だった。

 前方をVWのヘッドライトが照らしている。

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 スピードが無意識に上がっている。砂漠を走る道路の横は砂漠の瓦礫である。ヘッドライトの照らす明るい部分と暗闇に繋がる部分に霞がかかっていた。その時であった。前方から白いタバーンを巻いた一団が目に入った。我々の車に向かって丸太棒を放り投げてきた。それも何本もである。丸太をかわすごとに車体が大きく傾く。運転していたのは大学の自動車部でならしたヒリキである。ヒリキの顔がひきつっている。車は車道を大きくはずれて砂漠の瓦礫の上をボコンボコンと音を出して進んだ。どうにか車は横転せずに車道に戻った。後方を見ると闇の中に白い一団がみるみる消えていった。
 
 人生は一寸先は闇。禍福はあざなえる縄の如し。仏教では運否は天賦なりという。人の運不運は天だけが知っている。

 3人は車を停めず無茶苦茶に走って横転もせず走り過ぎることができた。今から40年前の真っ暗な砂漠のなかのことだっだ。身ぐるみはがれて放り出されて息絶えたとしても何もなかったであろう時代だった。そういえばトルコの日本大使館で言われたことを想い出す。

 ”君達がどこに行こうがいいがここには来なかったし知らないことだ”といわれたことを。

 車は闇に光をかざす村に近づいていった。ディアレムの村である。ディアレムの街路に車を停めて回りをみたがチャイハネがあるでなし、その場でエンジンを切って目を閉じるとそのまま眠りに落ちていった。天は二日後にまた我々に味方することなど知る由もない。